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建礼門院右京大夫集 現代語訳

357 くだきける

返す返すもつらさより他の思い出のない身ながら、年は積もって、無駄に明かして暮らしながら、思い出されることごとを少しずつ書き付けているのだ。ときたま人が自分の歌を書き集めたことがあるかというときには、あまり自分の思うままのことでは苦痛にも思われて、ほんの一端だけを書いてみせた。これはただ私ひとりだけで見ようと思って、書き付けたのを、のちに見て、

くだきけるおもひの程の悲しきにかきあつめてぞさらに知らるゝ

心が砕き悩んだほどに悲しいことでしたが、書き集めてみるとさらに悲しさが知られます。

 

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