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建礼門院右京大夫集 現代語訳

358 - 359 言の葉の/おなじくは

老いの後、民部卿定家が歌を集めることがあるといって、「書き置いているものはありますか」と私にも尋ねられたのだけでも、歌人の人数の中に私を思い出して言われた情けがありがたく思われたが、「どちらの名で採録しようと思いますか」と問われた思いやりがたいそう嬉しく思われて、やはりただ、隔て果てた昔のことが忘れがたいので、「昔の名のままで」など申し上げて、

言の葉のもし世にちらば忍ばしき昔の名こそとめまほしけれ

私の歌がもし世に散らばるものならば、慕わしい昔の名を残したいものです。

返し            民部卿

おなじくは心とめけるいにしへのその名をさらに世にのこさなん

同じことならば、あなたが心に留めている昔の名をそのままずっと世に残しましょう。

と返歌があったのが嬉しく思われた。

 


メモ

民部卿定家 藤原定家。藤原俊成の子。


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