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建礼門院右京大夫集 現代語訳
347 - 348 名にしおふ/名にたかき
九月十三日の夜は名月といわれているが、その通りに晴れていたが、親長(ちかなが)が政務の指図などで忙しくて、打ち解けた様子も見せず、ちょっと向こうを向き、ちょっとした紙の切れ端に書いて、若い人々が大盤所にいた中をかき分けかき分け、私の後ろの方に寄って来て、懐より取り出して、くださった。
名にしおふ夜(よ)をなが月の十日あまり君みよとてや月もさやけき
今宵は有名な秋の夜の長い九月十三夜、あなたに見てもらいたくて月も光がさえて明るいのでしょう(「みよ」に「君見よ」と「十日あまり三夜」をかける)。
返し
名にたかき夜(よ)をなが月の月はよしうき身にみえば曇りもぞする
名高い秋の夜の長い九月十三夜の月は光がさえていようとも、つらい身の上の者が見れば、曇っても見えます。
メモ
親長 平親長。平親宗の子。