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建礼門院右京大夫集 現代語訳
330 - 331 つきもせぬ/かけながら
隆房の中納言が不運なことがあって、籠っているもとへ、この人だけは昔のことも自然に話したりする人となので、お見舞い申し上げるということで、五月五日に、
つきもせぬうきねは袖にかけながらよその涙を思ひやるかな
菖蒲を袖にかけるにつけても、尽きもしないつらさに私は涙を袖にかけています。そして陰ながら、あなたの涙のことを思いやっています。
返し
かけながらうきねにつけて思ひやれあやめも知らずくらす心を
菖蒲を袖にかけながら辛さにお泣きになるにつけ、今日が菖蒲をかける日だとも知らずに暮らしている私の心を陰ながら思いやってください。
メモ
隆房 藤原隆房。平清盛の娘婿。
うきね 「うき」は憂きと泥をかけ、「ね」は泣く音と菖蒲の根をかける。
かけながら かけながらと陰ながらをかける。