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建礼門院右京大夫集 現代語訳
327 - 329 水の泡と〜うかりける
人が訴訟することのあったのを、それに当たっている人が裁断するのを聞くと、後白河院の御時にいただいた御下し文だなどといって、このまだ夢が覚めきっていないと思う人(平資盛)が蔵人頭にあったときに書いたものといって、その名を聞くと、どんなにしみじみとした感慨も一通りであろうか。
水の泡と消えし人の名ばかりをさすがにとめてきくも悲しき
水の泡のように消えた人の名だけはさすがにこの世に残っていて、その名を聞くのは悲しいことです。
面影もその名もさらば消えもせできゝみるごとに心まどはす
面影もその名前も、死んでしまったら消えてしまえばいいのに、消えもしないで、その名前を聞いたり見たりする度に心を惑わします。
うかりける夢の契の身をさらでさむるよもなきなげきのみする
つらい夢の約束は身を離れることなく、覚める時のないことをただ嘆くだけです。
メモ