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建礼門院右京大夫集 現代語訳
311-321 思ふこと〜いつまでか
(七夕の歌の続き)
思ふことかけどつきせぬ梶の葉にけふにあひぬるゆゑをしらばや
梶の葉に思うことをいくら書いても尽きることはない。梶の葉に思うことを書き付ける今日をまた迎えたわけを知りたいものです。(七夕には思うことを7葉の梶の葉に)
よしかさじかゝるうき身の衣手はたなばたつめにいまれもぞする
よし、このような辛い身の私の着物は供えまい。織姫に縁起でもないと忌まれるであろうから。
かたばかりかきて手向くるうたかたをふたつの星のいかゞ見るらむ
はかない我が身の上を形ばかりに書いて手向けた私の歌を、2つの星はどう見るでしょうか。
なにとなく夜半のあはれに袖ぬれてながめぞかぬる星あひの空
夜中に2つの星が出逢う空を眺めていると、なんとなくしみじみとあわれに感じて袖が涙に濡れて眺めていることができない。
えぞしらぬ忍ぶゆゑなき彦星のまれに契てなげくこゝろを
忍ぶ理由もないのに彦星が1年に1度という稀に逢う約束をして嘆く気持ちは私にはわかりません。
なげきても逢瀬をたのむ天の河このわたりこそかなしかりけれ
七夕の逢瀬を嘆いても、1年に1度は天の川を渡って逢うことができるのです。私とあの方との間は渡ることができず悲しいことです。
かきつけばなほもつゝまし思ひなげく心のうちを星よしらなん
思うことを書き付けようとすれば、やはり恥ずかしくて遠慮してしまいます。思い嘆く心の内を、星よ、知ってほしいのです。
引く糸のたゞ一すぢにこひこひて今宵あふ瀬もうらやまれつゝ
ただ一筋に恋いこがれて逢うことになった今宵の逢瀬がうらやましいことです。
たぐひなきなげきに沈む人ぞとてこのことの葉を星やいとはん
類のない嘆きに沈んでいる人の歌だとして、私のこの手向けの歌を星は嫌うだろうか。
よしやまた慰めかはせ七夕よかゝる思ひにまよふこゝろを
よし、七夕よ、このように迷う心を、また互いに慰めあってください。
七夕の歌は今回が最後かと思っても、また数が増えていくので、
いつまでか七夕のうたをかきつけん知らばや告げよ天の彦星
いつまで七夕の歌を書き付けるのだろうか。知っているのならば教えてください。天の彦星よ。
メモ