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建礼門院右京大夫集 現代語訳
301-310 よひの間に〜かさねても
(七夕の歌の続き)
よひの間に入にし月の影までもあかぬ心やふかきたなばた
宵の間に入ってしまった月の光までも飽き足らない心が深いことであろう。七夕の日は。
七夕の契なげきし身のはては逢瀬をよそにきゝわたりつゝ
七夕の約束を嘆いていた我が身の果ては、逢瀬を自分とは関係のないものと聞き続けています。
ながむれば心もつきて星あひの空にみちぬる我おもひかな
星合いの空を眺めていると、心も虚ろになり、星合いの空が私の思いでいっぱいになってしまいます。
露けさは秋の野辺にもまさるらしたちわかれゆく天の羽ごろも
露に濡れている様子は秋の野辺にも勝るらしい。別れてゆく織姫の天の羽衣は。
彦星の思ふ心は夜(よ)ふかくていかに明けぬる天の戸ならむ
彦星の心では、まだ夜が深いのに、どうして天の岩戸が開いて夜が明けたのか、と思っていることであろう。
七夕のあひみる宵の秋風に物おもふ袖のつゆはらはなん
七夕の相逢う今宵の秋風で、物思う私の袖の涙の露を吹き払ってほしいものです。
秋ごとに別れしころと思ひいづる心のうちを星はみるらん
秋ごとにあの方と別れた頃だと思い出してる私の心のうちを星はわかってくれていることでしょう。
七夕に心はかしてなげくともかゝる思ひをえしもかたらぬ
七夕に心を托して嘆いても、このような思いを語ることはできません。
世中は見しにもあらずなりぬるにおもがはりせぬ星あひの空
世の中の様子は以前とは変わってしまったのに、星合いの空は様子が変わりません。
かさねてもなほや露けきほどもなく袖わかるべき天の羽衣
袖を重ねていても、やはり涙の露で濡れているのだろうか。間もなく別れなければならない織姫の羽衣は。
メモ