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建礼門院右京大夫集 現代語訳
268 いかにせん
三月の二十日あまりの頃、はかなく別れた人(平資盛)が水の泡となった日なので、例のように、我が心ひとつに秘めて、あれこれ思い、法事を営むにつけても、私が亡くなった後、誰がこれほども思いやるだろうか。このように私が思ったことといって、そのことを思い出す人もないのが、堪え難く悲しくて、しくしくと泣くより他にない。我が身が亡くなることよりも、このことが悲しく思われるので、
いかにせん我(わが)のちの世はさてもなほ昔のけふをとふ人もがな
自分の後世のことはさておいて、昔の人(平資盛)の今日のこの忌日を弔ってくれる人があってほしいものだが、ありそうにもない。
メモ
三月の二十日あまりの頃 三月二十四日が平資盛の命日。
『玉葉和歌集』雑四に所収。