建礼門院右京大夫集 現代語訳

251 月をこそ

十二月一日頃であったろうか、夜に入って、雨とも雪ともなく散ってきて、群雲の行き来がさわがしく、すっかり曇ってしまいもしないで、星が消えたり光ったりする。引きかぶって臥していた衣を、夜の更けた頃、丑二(午前1時30分〜2時)頃かと思うときに、引きのけて、空を見上げたところ、特別きれいに晴れて、浅葱色であるのに、光が異様に強く大きな星が一面に出ているのが、ひととおりでなく興味深くて、薄藍色の紙に箔をうち散らしているのによく似ている。今宵初めて見初めた心地がする。今までにも、星月夜は見馴れていることだが、これは場合が場合だからであろうか、特別な心地がするにつけても、ただただ物思いに耽るばかりである。

月をこそながめ馴れにし星の月のふかきあはれを今宵しりぬる

月を眺めることは馴れてきたが、星月夜の深い情趣は今宵知りました。

 


メモ

星月夜 星明かりで月夜のように明るい夜。

『玉葉和歌集』雑二に所収。


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