建礼門院右京大夫集 現代語訳

247 - 248 立ちなれし/ことゝはむ

心を込めてお勤めをして、ただ一筋に契りをかわした人(平資盛)の後の世が安らかであるようにとばかり祈られるが、依然として甲斐のないことばかり、思うまいとしてもまたどうして思わずにいられよう。

立ち出て外の方を見ると、橘の木に雪が深く積もっているのを見ても、いつの年であったか、宮中で雪がとても高く積もっていた朝、宿直姿の糊気のとれた萎えた直衣で、この木に降り積もっていた雪を、すべて折って持っていたのを、「なぜそれを折られたのですか」と申し上げたところ、「いつも行き来する右近の方の木なので、因縁が懐かしくて」と、言った折のことが、つい今のことのように思われて、悲しいことは言いようがない。

立ちなれしみかきのうちのたち花も雪と消えにし人やこふらむ

あの方の慣れ親しんでいた禁中の橘も、雪のように消えてしまった人のことを恋い慕っているだろうか。

と、まず思いやられる。目の前に見ているこの木は、葉だけが茂って色もさびしい。

ことゝはむ五月ならでもたち花に昔の袖の香はのこるやと

尋ねてみたい。五月の花橘は昔の人の袖の香がするというが、五月でなくても橘に昔の人の袖の香は残っているか、と。

 


メモ

 


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