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建礼門院右京大夫集 現代語訳
245 - 246 うきことは/関こえて
行こうと志した所は、比叡坂本の辺りである。かきくもって雪が降っていたが、都は遥かに隔たっている心地がして、何の思い出の種にこんな所に来たのかと心細い。夜が更けてくると、雁の一群がこの家の上を過ぎる音がするのも、まずしみじみとだけ聞いて、なんとなくしょんぼりと涙がこぼれる。
うきことは所がらかとのがるれどいづくもかりの宿ゝきこゆる
つらい気持ちは場所のせいかと都を逃れたが、雁の過ぎゆく音を聞くと、どこでも借りの宿だと思われます。
関ひとつだけ越えたというのは、それほど遠い距離でもないだろうに、梢に響く嵐の音も、都よりは殊の外に激しいので、
関こえていく雲ゐまでへだてねど都には似ぬ山おろしかな
関を越えて空をいくつも隔てているわけではないが、都とは違う山おろしの風の激しさです。
メモ