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建礼門院右京大夫集 現代語訳
212 - 213 朝夕に/まだしなぬ
重衡の三位の中将がうき身(つらいことの多い身の上)になって都にしばらくいると聞こえた頃、とりわけ、昔親しかった人々の中でも、朝夕に馴れ親しんで、おかしなことを言い、また些細なことにも、人のために都合のよい心遣いをしてくれたりなどして、ありがたかったのに、前世のどのような報いなのかと心がつらい。重衡を見かけた人が「お顔は変わらないので、まともに見ていられない」などと言うのが、心つらく言いようがないほど悲しい。
朝夕にみなれすぎしゝそのむかしかゝるべしとは思ひてもみず
朝夕に慣れ親しんで過ごしたその昔は、このようなことになろうとは夢にも思っていませんでした。
返す返す心の内が推し量られて、
まだしなぬこの世のうちに身をかへてなに心地してあけ暮すらむ
まだ死なないこの世のうちで身の上を変えて、どんな気持ちで日々を暮らしているのでしょうか。
メモ
重衡 平重衡。平清盛の五男。
うき身 平重衡は寿永3年2月7日、一の谷の合戦で捕虜となり、14日入洛、翌3月10日鎌倉に護送された。