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建礼門院右京大夫集 現代語訳
205 いづくにて
言いようのない気持ちでいるままに、秋が深まってゆく様子に、ましてまったく生きている心地もせず、月の明るい夜、空の様子、雲のたたずまい、風の音がひどく悲しいのを眺めながら、落ち着く先もない旅の空で、どんな気持ちであろうかとばかり、泣き濡れてしまう。
いづくにていかなることを思ひつゝ今宵の月に袖しぼるらむ
あの人はどこでどんなことを思いながら、今宵の月を眺め、涙で濡れた袖をしぼっているのだろうか。
メモ
『玉葉和歌集』雑五に所収。