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建礼門院右京大夫集 現代語訳

150 - 151 むかしおもふ/わびつゝは

またしばらく何の便りもなくて、文が細々とあった返しに、などやらん、とても心が乱れて、ただそこにあった橘を一枝包んで贈ったが、どういうわけかわからないといって、

むかしおもふ匂ひかなにぞ小車(おぐるま)にいれしたぐひの我身ならぬに

この橘は昔のことを思い出してのことですか、それとも他に意味があるのですか。私を小車の中に橘を投げ込まれた潘安仁に擬されたわけではありますまい。

返し

わびつゝはかさねし袖のうつり香に思ひよそへてをりし橘

思い悩み苦しんでは、お逢いしたときの袖の移り香になずらえて折りとった橘です。

 


メモ

「むかしおもふ〜」は『隆信集』恋五に所収。


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