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建礼門院右京大夫集 現代語訳
146 - 147 たれが香に/心にも
いつも迎えの車をよこして、人のもとへ行くなどしたが、正妻が正式に決まるであろうなどと聞いた頃、馴れた枕の元に、硯が見えたのを引き寄せて、書き付ける。
たれが香に思ひうつると忘るなよ夜な夜な馴れし枕ばかりは
あの人の心が誰に移ろうとも、夜な夜なし慣れた枕だけは私を忘れないで。
帰って後に見つけたといって早速向こうから
心にも袖にもとまるうつり香を枕にのみやちぎりおくべき
あなたの移り香は心にも袖にも留まっている。どうして枕にだけ「忘れるな」と契りをかけているのか。
メモ
『玉葉和歌集』恋三に、2首、平資盛との贈答歌として所収。前後の関係から藤原隆信との贈答か。