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建礼門院右京大夫集 現代語訳
112 雲のうへを
宮(建礼門院)が六波羅殿(ろくはらどの)にしばらくお出になって、いらせられる行けいの出車(いだしぐるま)に参っていた人が、その夜の月が趣深くて、登花殿(とうかでん)の方などで、人々を連れて見たが、その暁にその人が退出して、翌朝に「昨夜の月に心は留まって」と申していたので、
雲のうへをいそぎ出でにし月なればほかに心はすむとしりにき
月が棲んで美しかった宮中を急いで退出したあなたのことですから、他所に心は棲んでいるのだと知りました。
メモ
六波羅殿 建礼門院平徳子の父、平清盛の別邸。
出車 随行の女房らが乗る牛車。女房の装束の裾を車の簾の下から出す。
登花殿 皇后・中宮・女御などが居住した所。