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建礼門院右京大夫集 現代語訳
059- 060 蘆わけの/蘆わけて
屋島の大臣とか、この頃、その人(平宗盛)のことを人々はお呼びするようだ。その人が中納言と申した頃、櫛をくださいとお願い申しておいたのを、くださるといって、紅の薄様(うすよう)に蘆分小舟(あしわけおぶね)の模様をつけた櫛をさしてあるが、並々でなく立派なのに、無理に押しつけられた。
蘆わけのさはるをぶねにくれなゐの深き心をよするとをしれ
蘆間を分けて障りにあいながら進んでいく小舟に、あなたへの深い心を托していると知ってください。
返し 白い薄様にて
蘆わけて心よせけるをぶねともくれなゐふかきいろにてぞしる
蘆間を分けて小舟が進むように、障りを押し切って心を寄せてくださいますことを、薄様の紅の深い色で知りました。
メモ
薄様 薄手の雁皮紙。