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建礼門院右京大夫集 現代語訳
061 夕日うつる
なんとなく見聞きすることに気にもとめないで過ごしながら、普通の人のようにはるまいと思ったが、1日中、女どうしのように交じっていて見交わす男の人がたくさんいた中で、とやかく言い立てるのをあってはならないことだと、人のこと(恋愛事件)を見聞きしても思ったが、前世からの因縁とかは逃れ難くて、思いの外に物思いが加わって、さまざま思い乱れた頃、宮中から下がって自宅にいたとき、はるかに西の方を眺めやる。梢は夕日の色に沈んで趣深かったが、そこへまた空を暗くして時雨が降るのを見るにつけても、
夕日うつる梢の色のしぐるゝに心もやがてかきくらすかな
夕日が映る梢の色が時雨れるとともに暗くなって、私の心も同時にそのまま暗くなっていくことだ。
メモ
平資盛との関係に思い乱れていた頃の歌。
『玉葉和歌集』恋四に所収。