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建礼門院右京大夫集 現代語訳
231 - 232 さりともと/行方なく
気がまぎれることもないときには、仏にだけ向かい奉るのも、さすがに幼い頃から仏をお頼み申し上げてきたが、我が身の不運を思い知ることばかりあって、またこのような類例のないこと(平資盛との死別)を思うのも、いかなるわけであろうかと神も仏も恨めしくさえなって、
さりともとたのむ仏もめぐまねば後の世までをおもふかなしさ
そうであってもと頼む仏も恵みを与えてくれないので、後の世でもどんなにつらかろうかと思われて悲しいことです。
行方(ゆくゑ)なくわが身もさらばあくがれん跡ゝどむべきうき世ならぬに
仏も恵みを与えてくれないならば、行方も定めず、心だけでなく体も、あの方を求めてあこがれ出ていきたいものだ。跡をとどめていたいようなこの世ではないので。
メモ
「行方なく〜」は『新千載和歌集』雑中に所収。