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建礼門院右京大夫集 現代語訳
186 - 191 よそにても〜あけがたの
上臈女房だちて近くにお仕えした人がとりわけ仲良くなったが我が物申す人のこのかみなりしは、お縁の上に、やがてみや人にて、ことにつねにかし人、しのんで心交わして、互いに思いあっていないのでもあるまいと見えたが、世の習いで、女の方が物思いをする様子であったのを、はっきりとはしないがどうもそう思われたので、少し、様子を知ってほしくて、男のもとへ遣わす。
よそにても契あはれにみる人をつらきめみせばいかにうからん
よそ目にもあなたへの恋心が愛しく見えるあの人に辛い目を見せるようなことがあれば、私もどんなにか悲しいことでしょう。
たちかへる名残こそとはいはずとも枕もいかにきみをまつらん
枕はひとではないから帰っていくのが名残惜しいとはいわないけれども、枕もどんなにかあなたを待っていることでしょう。
おきてゆき人のなごりやをしあけの月かげしろしみちしばの露
朝が来て戸を開けて帰っていく人の名残を惜しみながら眺めていると、夜明けの月の光が道の芝においた露を白く照らしている。
返し、「余計なおせっかいだ。だがこのようなことも不似合いな身には言葉もないが」
わがおもひ人の心をおしはかりなにとさまざまきみなげくらむ
自分の思いで人の心を推し量り、あなたはどうしてとやかく嘆くのだろうか。
枕にも人にも心おもひつけなごりよなにときみぞいひなす
枕にも人にも自分の心の思いをつけて、名残だなんだとあなたは事実とは違うことを事実らしく言うのですね。
あけがたの月をたもとにやどしつゝかへさの袖は我ぞつゆけき
明け方の月を涙に濡れた袂に宿しながら帰っていく私の袖は、見送る人よりもずっと涙に濡れているのです。
メモ
後の三首は平維盛の歌か。