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建礼門院右京大夫集 現代語訳
080 - 082 君が代に/心ざし
5月5日、宮の権大夫時忠(平時忠)のもとより、くすだままきたる箱のふたに、菖蒲の薄様を敷いて、同じ薄様に歌を書いて、特別に根の長い菖蒲を参上させて、
君が代にひきくらぶれば菖蒲草(あやめぐさ)ながしてふ根もあかずぞありける
君の御長寿にひきくらべたら、長いという菖蒲草の根も不十分に思います。
返し 花橘の薄様にて
心ざし深くぞみゆるあやめ草ながきためしにひける根なれば
御心ざし深く見えます。長寿の例として引いた菖蒲草の根ですから。
メモ
時忠 中宮権大夫、平時忠。平時子(平清盛の正室)の弟、建春門院滋子の兄。
くすだま 薬玉。種々の香料を玉にして袋に詰め、薬草や造花をつけ、長い5色の糸を垂らした飾り物。5月5日にこれを懸ければ、不浄を払い、邪気を避け、命を延べるとされた。
薄様 薄手の雁皮紙。