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建礼門院右京大夫集 現代語訳
058 雲のうへは
いずれの年であっただろうか、五節の頃、内裏近くで火事があって、すでに危なかったので、南殿(なでん)に腰輿(ようよ)を用意して、大将をはじめ衛府の司の様子はとりどりに立派に見えたが、大方の世の騒ぎも他にはこのようなことはあるまいと思われたのも、忘れ難い。
宮(建礼門院)は御手車にて行啓すべしと聞こえた。小松の大臣(平重盛)が大将で、直衣に矢を背負って、中宮(建礼門院)の御方へお参りになった事柄などが、よく思い出される。
雲のうへはもゆる煙(けぶり)にたちさわぐ人のけしきもめにとまるかな
宮中では火事の燃える煙に立ち騒ぐ人の様子も、心ひかれることです。
メモ
南殿 紫宸殿。即位・朝賀・節会などの儀式や公事を行った。
腰輿 手輿。