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建礼門院右京大夫集 現代語訳
004 - 005 松風の/よのつねの
頭中将さねむねが常に中宮(建礼門院)の御所へ参って、琵琶を弾き、歌を歌い、遊んで、ときどき「琴を弾け」などいわれたのを「興がさめること」とだけ申し上げて過ごしたが、ある折、手紙のようにして、ただこのようにこちらに送って来られた。
松風のひゞきもそへぬ独(ひとり)ごとはさのみつれなきねをやつくさむ
あなたの琴の音を添えぬ琵琶の独弾は、そんなにさびしい音ばかりを調べることなのか。そんなにつれなくしないでください。
返し
よのつねの松風ならばいかばかりあかぬしらべにねもかはさまし
私の琴が人並みのものであるならば、どんなにかあくことのないあなたの琵琶の調べに交わして弾きましょうに。
メモ
頭中将 近衛府の中将。
さねむね 西園寺実宗。琵琶の名手