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建礼門院右京大夫集 現代語訳

106 - 109 いかばかり/旅衣/とこのうへも/日にそへて

成親の大納言(藤原成親)が遠い所へ下られたのち、院の京極どの(藤原成親の妻)の御もとへ、

いかばかり枕のしたもこほるらむなべての袖もさゆるこのごろ

普通の人の袖も冷えるこの頃、まして涙に濡れるあなたの枕の下はどんなにか凍っていることでしょう。

旅衣たちわかれにしあとの袖もろきなみだの露やひまなき

お別れになった後の袖のうえは、こぼれる涙のやむ時もないことでしょう。

返し

とこのうへも袖も涙のつらゝにてあかす思ひのやるかたもなし

床の上にも袖にも涙の氷柱ができて、夜を明かす思いの晴らしようもありません。

日にそへてあれゆく宿を思ひやれ人をしのぶの露にやつれて

亡き夫をしのぶ涙にやつれて、生い茂ったしのぶ草に露がおいて、日に日に荒れゆく宿を思いやってください。

 


メモ

成親の大納言 藤原成親後白河院の側近。鹿の谷事件で平清盛に捕えられ、備前国に配流。その後、殺害された。

院の京極どの 後白河院京極局。後白河院に仕えていた女房で、藤原成親の妻。藤原俊成の娘。


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