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建礼門院右京大夫集 現代語訳

102 - 105 かきくらす/とまるらむ/おとづるゝ/みがきこし

小松の大臣(平重盛)がお亡くなりになってのち、その妻(藤原経子)のもとへ、十月ばかりに差し上げる。

かきくらす夜の雨にも色かはる袖のしぐれを思ひこそやれ

かき曇って夜の雨がふるにつけても、喪服の袖の色が変わるほど涙していらっしゃることと御察しいたします。

とまるらむ古き枕に塵はゐてはらはぬ床(とこ)をおもひこそやれ

亡き御夫君の枕はそのまま置かれているでしょうが、枕に塵が積もり払いもしないままになっている床の様子を思いやっています。

返し

おとづるゝ時雨(しぐれ)は袖にあらそひてなくなくあかす夜半ぞ悲しき

時雨が降ると、時雨と涙が争って袖を濡らします。泣く泣く夜中を明かすのは悲しいことです。

みがきこしたまのよどこに塵つみて古き枕をみるぞかなしき

磨き立ててきた立派な夜床に塵が積もって、古い枕を見るのは悲しいことです。

 


メモ

小松の大臣 平重盛平清盛の嫡男。平維盛、資盛の父。治承3年(1179年)8月1日没。享年42。

藤原経子 平重盛の正室。藤原家成の四女。藤原成親の妹。

色かわる 「常服と変わった喪服の色」と「涙で袖の色が変わる」をかけている。

古き枕 人が死んでから1周年の間、床をそのままにしておいた。


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